ジャポニスム美術家である私とゴッホ I, as a Japonisme artist, and van Gogh
私はジャポニスムが大好きです。日本語に翻訳すると「日本趣味」。ベルリン大学時代から、欧米における日本趣味の歴史や影響を国立図書館で調べ、今でもジャポニスム関係の本を集めています。ジャポニスムの「ズレ」「違和感」「妄想」「異国趣味」に強く惹かれます。自分のアーティスト活動の中には、「néo japonisme」(1996- )や「新日本画」(2008- )というシリーズがありますが、これらはジャポニスムの流れに位置する作品です。日本美術史家・山下裕二氏の評論や、日本現代アーティストが自身の作品をジャポニスムと評するケースをしばしば見かけまが、それは間違った使い方です。定義上、ジャポニスムという専門用語は、「外国人が感じる日本趣味」であり、日本人が感じる日本趣味ではありません。
世界の絵画史では、クロード・モネ《ラ・ジャポネーズ》(1875-76)、ジェームズ・マクニール・ホイッスラー《La Princesse du Pay de la Porcelaine》(1863-1864)、ジョルジュ・ ロシュグロス《Portrait de Sarah Bernhardt》(1900) 、ジェームズ・ティソ「La Japonaise au bain」(1864年)などが、代表的な作品です。はたして、《Gogh, Kiyoshiro & Me (Summertime Blues – Tokyo 2020)》は、ジャポニスムの歴史に名を残すことができるでしょうか。
2012年のアートフェア東京での個展にて、美術評論家・名古屋覚氏から、「あなたは日本で一番良い油絵画家です。そして、作品にイタリアのルーツを感じる」と言われました。考えてもいなかった言葉に、今後、より良い作品をつくることへの、将来への強いプレッシャーを感じました。キャンバスと格闘しながら、新しいジャポニスム(=和洋折衷)を生み出し、課題を解釈・解決し、いかに規則を曲げられるかに真剣に取り組む毎日です。
もう一つの楽しい試みは、鑑賞者や専門家に、様々なアートの遺伝子情報を解読(decode)させることです。今回は、好きなジャポニスム作品の一つである、ゴッホの《花魁》 (1887) を再構築し、自分らしくゆがんだ画像に変形しました。そして《Summertime Blues》で2020年の東京オリンピックに向けたソーシャル・コメンタリーを発信し、「制御不能=not under control」な現状に対して現れてきた変革の兆しを絵画化しています。東京オリンピックのポスターに選ばれることはないでしょうが……。アートフェア東京2016年で初公開される《Gogh, Kiyoshiro & Me (Summertime Blues – Tokyo 2020)》に込められた様々な隠喩と情報を楽しく解読してもらえれば幸いです。
東京、2018年3月2日
亜 真里男
2017年10月21日(火)~2018年1月28日(月・祝)
国立西洋美術館 The National Museum of Western Art
http://artdiver.moo.jp/?p=1573
「北斎とジャポニスム」より
「北斎とジャポニスム」より
2018年7月24日、アップデート:
根強い印象派人気
2位を記録したのは、根強い人気を誇るゴッホだ。37万31人を動員した東京都美術館「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」(2017年10月24日~2018年1月8日)は、日本初のファン・ゴッホ美術館との共同企画展。同展は、そのタイトルの通りゴッホと日本の関係性を検証するもの。浮世絵を大胆に模写した油彩画《花魁(渓斎英泉による)》(1887)など、ゴッホが日本から影響を受けて描いた作品を展示するとともに、葛飾北斎や歌川広重などの浮世絵も展示。ゴッホと浮世絵の直接的、あるいは間接的な影響を示す試みが見られた。
https://bijutsutecho.com/magazine/insight/18130