Art + Culture

令和三年歌会始の儀 UTAKAI HAJIME - The Annual New Year's 'Tanka' Poetry Ceremonial Party at The Imperial Palace in Reiwa 3

UTAKAI HAJIME 天皇、皇后両陛下と皇族方が出席されて行われた「歌会始の儀」=皇居・宮殿「松の間」で令和三年三月二十六日
UTAKAI HAJIME 天皇、皇后両陛下と皇族方が出席されて行われた「歌会始の儀」=皇居・宮殿「松の間」で令和三年三月二十六日

新型コロナウイルス禍で今年1月から延期されていた「歌会始の儀」が26日、皇居・宮殿「松の間」で行われ、「実」をお題に天皇、皇后両陛下のお歌や、一般応募から選ばれた入選者の歌などが古式ゆかしい節回しで披露された。一部でオンラインを活用し、感染防止対策を徹底した異例の形で実施された。
儀式では、歌を詠み上げる際に飛沫(ひまつ)の拡散を防ぐため、詠む役はフェースシールドを着用し、周囲にはアクリル板が設置された。

「歌会始の儀」で朗詠を聞かれる天皇、皇后両陛下=皇居・宮殿「松の間」で令和三年三月二十六日午前10時55分
「歌会始の儀」で朗詠を聞かれる天皇、皇后両陛下=皇居・宮殿「松の間」で令和三年三月二十六日午前10時55分

入選者10人のうち1人はオンラインで参加。座る予定だった席にモニターを設置し、両陛下のお席から画面越しに顔が見えるような工夫も凝らした。

令和三年歌会始の儀
令和三年歌会始の儀 UTAKAI HAJIME Reiwa 3

宮内庁によると、松の間で行われる儀式でアクリル板やフェースシールド、モニターが使用されるのは初めてという。
両陛下はともに新型コロナの流行について詠まれた。宮内庁によると、天皇陛下はコロナ禍で困難に直面している人たちに思いを寄せ、この試練を乗り越えようとする人々の努力が実を結び、感染症が収束することを願う気持ちを込められた。
皇后さまは緊急事態宣言中の昨年5月、お住まいの赤坂御用地で青々と大きくなった梅の実に目を留め、コロナ禍で人々の日常が大きく変わった世の中でも、自然の営みは変わらないことに感慨深い思いを持ったことを詠まれた。
秋篠宮さまは、夏の暑い日に控えめに咲く稲の花が秋には黄金色の豊かな稲穂となることを願う気持ちを、紀子さまは赤坂御用地で秋にたくさんの実を付けたカリンの香りに安らぎを感じたことをそれぞれ詠まれた。
歌会始は当初、1月15日に予定されていたが、感染者の急増で延期されていた。

令和三年三月二十六日

天皇、皇后両陛下と皇族方のお歌、入選者の歌

天皇、皇后両陛下と皇族方のお歌、入選者らの歌は以下の通り(仮名遣い、ルビは原文のまま)

天皇陛下 His Majesty The Emperor Naruhito

 人々の願ひと努力が実を結び平らけき世の到るを祈る

Hitobitono/ Negai to Doryoku ga/ Mi wo Musubi/ Tairakeki Yo no/ Itaru wo Inoru

English translation of the poem by His Majesty The Emperor Naruhito:
I sincerely pray that/ The hope and efforts of the people/ Bear beautiful fruit/ Leading us to peaceful days

天皇陛下のお歌「人々の願ひと努力が実を結び平らけき世の到るを祈る」
天皇陛下のお歌「人々の願ひと努力が実を結び平らけき世の到るを祈る」

皇后陛下 Her Majesty The Empress Masako

 感染の収まりゆくをひた願ひ出で立つ園に梅の実あをし

Kansen no/ Osamariyukuwo/ Hitanegai/ Idetatsu Sono ni/ Ume no Mi Aoshi

English translation of the poem by Her Majesty The Empress Masako:
As I stand in the garden/ Yearning for/ The end of the infection’s spread/ The fruit of the ume/ Are a hopeful green

秋篠宮さま

 夏の日に咲き広ごれる稲の花実りの秋へと明るみてくる

秋篠宮妃紀子さま

 竹籠に熟るる黄色の花梨(くわりん)の実あまき香りは身に沁みとほる

秋篠宮家長女眞子さま

 烏瓜その実は冴ゆる朱の色に染まりてゆけり深まる秋に

秋篠宮家次女佳子さま

 鈴懸の木から落ちにし実を割りてふはふは綿毛を空へと飛ばす

常陸宮妃華子さま

 野鳥くる実のなる木々に植ゑかへて君は若かる庭師と語る

寛仁親王妃信子さま

 実りある日のくるためにながさるる汗は力となるを信ずる

三笠宮家彬子さま

 地図帳にあの日見つけし茶畑の不思議な点は茶の実のかたち

高円宮妃久子さま

 戸隠の森にはびこる蔓柾(つるまさき)赤き実を食(は)むは眉茶鶫(まみちやじない)か

高円宮家長女承子さま

 自室より画面越しにて繋がりて旅せぬ集ひも実現したる

【召人】

加賀乙彦(おとひこ)さん

 千年を生きむ樟(くす)の木が実在し巡りて子らは駈けつこをする

【選者】

篠弘さん

 野に棲めば己がからだは実(み)たされて銀杏(いちやう)黄葉(もみぢ)を両手に掬(すく)ふ

三枝●之(さいぐさ・たかゆき)さん=●は昂の下のへんが「エ」

 軒下の甲州百目(ひやくめ)まろやかにこのあめつちの実り明るむ

永田和宏さん

 若き日の実験ノートに残されて芙蓉のごとき歌の断片(きれはし)

今野寿美さん

 写実派が鳥の巣ゑがきその底のたまごふたつの聖なる斑(まだら)

内藤明さん

 いましばし眠りて待たむ茂り合ふ生命の樹に実の色づくを

【入選者】(年齢順)

秋田県 柴田勇さん(80)

 大学の実験室は旧兵舎窓辺に寄りて目盛を読みぬ

福井県 杉崎康代さん(77)

 見合ひ終へあなたの母から門前でゆすらの紅実(あかみ)てのひらにうく

三重県 加藤京子さん(71)

 此処よりは世界遺産と言ふ森の土やはらかし●(ぶな)の実落ちて

 =●は植物のブナの漢字

埼玉県 渡辺照夫さん(68)

 台風の進路予測を聴きながらまだ少し若い梨の実も穫る

神奈川県 松山紀子さん(58)

 実践に臨む瞳のあどけなさロボットはわが言葉聴きをり

東京都 石井豊彦さん(56)

 今日からは臨床実習の冬の朝少し足早に聖橋渡る

広島県 山本美和さん(53)

 シールドの向かうの客に釣り渡す架空のやうな現実にゐる

東京都 吉田直子さん(24)

 空白に史実のピース集めても想ひつかめぬ歴史のパズル

長野県 木下玲奈さん(24)

 せんせいと子らから呼ばれ振り返り実習生は先生となる

新潟県 藤井大豊(ひろと)さん(17)

 七限の書道の授業は「実」の文字最後の払ひに力を込める


UTAKAI HAJIME (New Year Poetry Reading ceremony in the Imperial Palace)

The Utakai Hajime (歌会始, New Year Poetry Reading) is an annual gathering, convened by the Emperor of Japan, in which participants read traditional Japanese poetry on a common theme before a wider audience. It is held in the beginning (around the 10th) of January at the Imperial Palace in Tokyo, and broadcast live on the semi-national television network NHK.
Because of Covid-19, the ceremony had been postponed. It occurred this morning, on 26th of March Reiwa 3. Imperial Household Agency officials said those whose poems were read took polymerase chain reaction tests before coming to the Imperial Palace.
The poems composed by Emperor Naruhito and Empress Masako contained their prayers for bringing the public health crisis under control. See the English translations attached at their poems.
This year, a total of 13,657 poems were submitted by members of the public in Japan and abroad.
The exact origins of the tradition are unclear, though it is known that the Emperor Kameyama convened a January poetry reading, at the Imperial Palace in Kyoto, as early as 1267. Sometime during the Edo-period the practice became more regular, and since the Meiji-restoration of 1869, it has been held almost every year.
Poems written by the general public were admitted for consideration for the first time in 1879. Since 1946, any poet whose work is selected is invited to attend. In 1957 American poet Lucille Nixon became the first non-Japanese person to do so.
Traditional “Waka” 和歌 poems written by Imperial Family members and 10 other composers selected from the public are read out loud.
“Waka” defines the genre “Tanka” 短歌 poetry, a classical Japanese 31-syllable verse written in a 5-7-5-7-7 meter/pattern.
If you are interested in this ceremony, please check the attached, rare live footage, 1 hour 22 minutes, from last year Reiwa 2 (2020):

令和二年【ほぼノーカット】宮中行事・歌会始の儀 お題は「望」 両陛下や皇族方がご出席