磯谷博史:時差画と虚像を巡る認識論 @ 青山|目黒 (過去サイト・アーカイブの再投稿) In the Context of Epistemology: ISOYA Hirofumi’s Virtual and Time Lag Images @ AOYAMA | MEGURO (repost from the archive)
2015年1月3日のARTiT 公式ブログから ART+CULTUREに移動するエントリー。
“In the Context of Epistemology: ISOYA Hirofumi’s Virtual and Time Lag Images @ AOYAMA | MEGURO” (3rd of January, 2015) repost from my former, now defunct, official ARTiT blog to ART+CULTURE.
(Some up-dates and alterations had been made)
Recommending his new exhibition:
磯谷 博史:流れを原型として @ 青山|目黒
ISOYA Hirofumi: Figured in the drift of things @ AOYAMA | MEGURO
https://art-culture.world/articles/isoya-hirofumi-figured-in-the-drift-of-things-aoyama-meguro/
磯谷博史:時差画と虚像を巡る認識論 @ 青山|目黒
(2015年1月3日)
A star is born。
一昨年、第55回ヴェネツィア・ビエンナーレ関連企画グループ展「Personal Structures」@ Palazzo Bembo、昨年、バーゼルLISTEの青山|目黒ブースでの盛況に続き、現在、同ギャラリーで非常に見応えのある磯谷博史個展「Lag」が開催中です。(1)
バーゼルでの大反響の中には、多くのグローバルトップキュレーター、批評家、コレクター、そして地元の人々が磯谷博史の様々な作品に深く興味を示し、高く評価されました。
新旧思想の衝突を飛び越え、日本現代アート史の概念を追求する高松次郎(2)のようなスピリットを垣間見ました。
未だに、このような、ありがたいアーティストが少ないのは不思議な事です。
我が国の美術界は、これまで文化庁が援助する美術団体や「官展」の芸術院などの組織団体が非常に強く、つまり、何十年もセンセイ達におべっかを使うアーティスト、「申し合わせ」の賄賂文化、年功序列の仕組みを産み出し、このような間違った権利のおかげで、下落の道を辿りました。(3)
その一方で、青山|目黒によって、優秀なノン・コンフォルミストなアーティストが応援され、例えば、田中功起さんは一昨年、第55回 ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館代表として、日本美術史の文脈で、初めて特別表彰受賞し、「アーティスト・オブ・ザ・イヤー 2015」の名誉を与えられました。(4)
今回、磯谷博史さんの個展にも、「Lag」という秀作が登場し、オーディエンスに非常に魅力的な観念を抱かせています。
では、次の写真には、何が観えるでしょう?
大体の方は、磯谷さんの表現媒体としての「写真」に視点が行き、その次に、棚から落下した「フレーム」に集中します。
では、その「フレーミング」(5) の表側にはどのような「写真」が写されているでしょう?
私が撮った写真に、磯谷さんの仕掛けたインスタレーションが、観えますか?
まず、この写真の裏側を確かめたくなるのではないでしょうか?
または、この時地震が起きたのか、作品が床に落ちる寸前をとらえたのか?
どういうわけか、現場の鑑賞者は、無意識的に体が動き出し、展示壁に手を差し伸べたくなるかもしれません。
頭の混乱ですが、結構、写真は、写実ではなく、非現実的なものです。延長概念として、インターネットの仮想現実性に相応しい隠喩だと言えるでしょう。
その他、一般的に「フレーミング」の裏には表の写真があるはずと想像しますが、その「裏」・「表」であるかは、誰が決めたのでしょうか?
反転象の方が、現実かもしれませんし、二元論も正しくないかもしれません。
「表・裏」「陰陽」「イエス・ノー」「両極」「女男」、「白黒」に対して、価値観は「社会的な枠組み」によって人それぞれ異なります。
ポスト・ポストモダンなグローバリズムの流れで、ポリフォニーや虚像の中で今を生きる若者の現実世界は、心理学的に新しい精神分析になるかもしれません。
磯谷さんの優れた作品の中には、もう一つの無調性的、考えさせられる層があります。
それは、謎めいた「将来を切り取る」写真にも観える事です。
つまり、「フレーミング」された「写真」がこれから棚から落下する「実在」。
それと全く同じ物が、目の前に見える。写真、フレーム、色、棚、螺子、、、全てのパーツがインスタレーション作品であり、一応、チェックしましたが、フレームに落ちた時の傷跡などはありませんでした。
逆説として、写実的な写真は「反実在」を表すとも言えます。一般論による写真は、「人類史の記録」、過去の写真のトゥロープ (trope)となりますが、磯谷の場合、「未来のトゥロープ」を暗示させます。
「Lag」作の精髄を究めると、ノスタルジアを未来に移動させる「時差画」です。落下した「フレーミング」は壊れた証拠が欠如で、原因と結果から世俗の超越が示唆されます。時間配列表と認識論をクリティカル・チャレンジの上、磯谷博史の想像力は、ある争点に加え、「生存」と「物の哀れ」に結晶し、鋭敏なアート実践を見事に表現しています。
その他、様々な感動的作品群の中、「Southward」という人気制作は、時計の歴史や開発を再概念しています。
北と南半球の鑑賞者の間に認識の差が感じられるのは、面白く、こちらも、今までの居場所を容認しないように、価値観を巡る文化論として解説できます。ある意味、「西洋文明」への崇高な批難、丁寧にソーシャル・コメンタリーし、「正しさ」に対する疑問を作り出しています。
後は、ご想像にお任せ致しますが、我々の繁栄は虚像にすぎなかったかもしれないというアレゴリーです。
磯谷博史の個展は、1月10日まで、是非とも、青山|目黒まで足をお運び下さいませ。英/日本語のカタログでの兼平彦太郎氏の評論もおすすめ致します。
東京、2015年1月3日
亜 真里男
(1)
磯谷 博史「Lag」
2014年12月13日[土] – 2015年1月10日[土]
http://aoyamameguro.com/artists/hirofumi-isoya-lag/
(2)
高松次郎ミステリーズ @ 東京国立近代美術館
2014年12月2日(火)~2015年3月1日(日)
http://www.momat.go.jp/Honkan/takamatsujiro/
2015年2月2日のアップ・デート:
高松次郎を巡るモダニズム対故意の無意義 @ 東京国立近代美術館 1/2
(former link)
http://www.art-it.asia/u/sfztpm/NRkIcoWfdUmMsHhF3iEe/
(3)
我が国にっぽんの恥「日展」
https://art-culture.world/articles/nitten-the-shame-of-our-nation-nippon/
(4)
田中功起「アーティスト・オブ・ザ・イヤー 2015」
(former link)
http://www.art-it.asia/u/sfztpm/02xAlY5ceUFh3gjB7Vrq/
(5)
ご参照:
Framing (social sciences)
https://en.wikipedia.org/wiki/Framing_(social_sciences)
Framing effect (psychology)
http://en.wikipedia.org/wiki/Framing_effect_(psychology)
—————————–
磯谷 博史「Lag」
2014年12月13日 – 2015年1月10日
青山|目黒
153-0051 東京都 目黒区 上目黒2-30-6
Tel. 03-3711-4099
http://aoyamameguro.com/artists/hirofumi-isoya-lag/
NADiff Window Gallery
vol.38
磯谷 博史「ブックローンチとウォールドローイング: Southward」
2014年11月23日 - 1月12日
作品集:磯谷博史『Hirofumi Isoya』
2014 / 青山|目黒 / A4 / 英語 ※日本語対訳リーフレット付き
執筆:兼平彦太郎「The depth of a moment」
価格:1,500円+税
東京都渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 1F
http://www.nadiff.com/fair_event/window38_isoya.html
磯谷博史のホームページ:
http://www.whoisisoya.com/
磯谷博史展「出来事をどう数えるか」
(2012年4月15日)
「The Clock」、「Clockwise」、「出来事をどう数えるか」。Idea as paramount。 青山 | 目黒で粋な磯谷博史展が開催中。Spatial空間と概念化された時間。
間のフォルムラ。 例えば、12時間、12日間の内に制作するという制限。 Hominem mortuum in urbe ne sepelito neve urito.
(Lex Duodecim Tabularum 十二表法を参考) 12時間の内で閉じ込められた12匹の虫をメメントモリに配合禁忌の隠喩。 偶然な彫刻著作物とクールなデザインと機能主義の緊張感を想像します。 ピタゴラス対太陰月。建築的アーバニズム対アントロポゾフィー な自然。 作品の出来事、アーティストの姿勢、どの環境、social habitat、どのぐらいの時間的 な抑制に存在しているか、思想の伝達での毎日。
謙虚、エチケット、常識。
建築、アート、社会。
さまざまな特性の不一致が芸術活動の課題である。
Weltschmerz。
作品群の中に崇高な美しさを持つサウダージが解読できます。 磯谷さんの精神図は、fore-edge paintingのように、アンフォルメルへの恋慕する切望 として観られます。
Art is demanding。
磯谷 博史 : 出来事をどう数えるか(アンコール)
Hirofumi Isoya : Counting The Event (Encore)
2012/4/12ー 4/23
http://aoyamameguro.com/artists/hirofumiisoya-counting-the-event-encore/
http://aoyamameguro.com/en/artists/hirofumiisoya-counting-the-event-encore/